消費者物価指数(日本CPI) 2017年5月

日本の物価は緩やかに上昇するも力強さに欠ける

2017年5月の消費者物価指数(CPI)は0.4%前月と同じで5ヵ月連続の上昇となった

また変動の激しい生鮮食品を除いたコアCPI0.4%と先月の0.3%からやや上昇ペースを早めた。

一方基調的なインフレ率を表すコアコアCPI0.1%と先月の0%からプラスへ転じた

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内容としては悪くないものの、日銀の「物価安定目標」である2%には依然遠く及ばず。具体的にはコアCPIが安定的に2%を超え続けるまでは、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を行うとしている。これを「オーバーシュートコミットメント」と呼ぶ。

当局側は4月の見通し発表(展望レポート)では2017年度は0.6%~1.6%、2018年度は0.8%~1.9%とみており、現状の物価水準は日銀の想定していた水準より低い状況にある。また2%の達成は18年度内としている。

現状の物価上昇は円安とエネルギー価格の反発によるもの

2014年後半から急激に落ち込んだコアCPIは、2014年4月の消費税増税の影響や、2015年以降の原油価格急落や円高進行によるものが大きかった。現在コアCPIは上昇基調へと転じているが、2015年以降の円高原油安の反動によるところが大きい。

知らないとヤバイ超重要経済指標「米雇用統計」

米雇用統計発表日はお祭りの日 

金融市場では毎月月初にお祭りを開催する。

その名も、「米雇用統計」だ。

正式名称は「Current Employment Statistics」で、米国の雇用環境を表す様々なデータが発表される。誰もが聞いたことあるであろう「失業率」の他に、「非農業部門雇用者数」、「平均賃金」、「週平均労働時間」といった値も公表されている。さらに産業別にデータが用意してある。

様々なデータがあるが、その中で最も注目されるデータは、「非農業部門雇用者数(季節調整済み、前月比)」と呼ばれるものだ。これは変動の激しい農業部門の雇用者数を除いた、全産業の雇用者の前月からの増減を表す。

日本時間で第1週金曜日の夜10時半(サマータイムは9時半)に発表される。多くの証券会社はこの指標予想を事前に公表しており、その平均値が市場予想として様々なメディアで公開されている。検索すればすぐ出てくるので、ぜひ調べてみてほしい。例えば、市場は次回の予想を20万人増としている、といった具合だ。

そしてこの予想に対して上回ったか、下回ったかで、金融市場が大きく揺れ動くことになる。それも為替だけでなく、株式市場や債券市場も大きく動く。しかもその動き具合が半端じゃない。どのくらいすごいかっていえば、FXで張ってれば、一瞬で掛け金の30、40%が上下するレベルだ。100万円張っていたら、一瞬で40万円が増減するとイメージしてもらえれば、それがどれほど大きいかわかるはずだ。市場予想から大きくずれれば、それ以上に吹き飛んだりもする。 

それだけ大きな動きを引き起こす指標なだけに、プロ・アマ問わず全世界の投資家がお祭り騒ぎしながら注目する指標、それが「米雇用統計」なのである。

さて、米国の雇用者の数が増減した程度で、なぜ世界中の金融市場で大きな変動が起きるのだろうか? 

投資家だけでなく、中央銀行にとっても重要な米雇用統計 

米国の雇用統計がこれほどまで大きな変動をもたらす理由は、投資家だけでなく、米国の中央銀行「Federal Reserve Board」(以下、FRB)も注目しているからだ。

日本語名では連邦準備制度理事会という。米国全土に12の連邦準備銀行が存在し、それを統括する理事会を意味する。名称は理事会だが実質的には中央銀行の役割を果たす。

FRBの役割は米国の物価安定と完全雇用の達成の二つで、そのために金融政策を行い、様々な金融資産の価格に影響を与える。このうち完全雇用の達成は、失業率を低下させ、非農業部門雇用者数の伸びを維持拡大することが求められるため、雇用統計の結果が非常に重要になってくるというわけだ。

結果次第でFRBは金融政策を変更する。この変更に最も敏感なのが米国の金利で、金利の変化が債券、為替、株式の価格を動かいていく。そして米国の金融市場の動きが世界中の金融市場へ波及していく。

こんな具合でFRBが金融市場に影響を与えるため、投資家は雇用統計の結果とその後のFRBの動向をとても気にする。そして結果が予想とずれれば、価格が大きく動くわけだ。 

米雇用統計の読み方 

米雇用統計には数多くのデータが公開されているが、特に気にしておきたい数字は、 

1.  失業率 

2.  非農業部門雇用者数伸び率 

3.  平均賃金伸び率 
 
の3つ。

失業率は景気がどのステージにいるか理解するのに役立つ。通常、失業率は景気サイクルに遅行しながら動くが、過去のピークやボトムから大きく乖離することも少ないため、比較がしやすい。

非農業部門雇用者数は、足元の景気の力強さを理解するのに役立つ。労働需要の高まりから雇用者数の伸びが加速してくるようであれば景気は上向き、反対に増加数が鈍化、もしくは減少に転じるようであれば景気は下向きである可能性を読み取ることが出来る。

最後に平均賃金の伸び率は、労働市場の需給環境を理解するのに役立つ。労働需給がひっ迫すると、企業側は労働者確保が困難になり、賃金は上昇を始める。 

米雇用統計と金融市場の動き 

雇用統計の内容が良い場合と悪い場合で、各金融市場はどのような反応をするだろうか。 

為替市場 

  • 良い場合 ドル高 
  • 悪い場合 ドル安 

とてもシンプルで、労働市場の改善、需給の逼迫はFRBによる将来の利上げ可能性を高めるため、金利上昇→ドル高となる。

債券市場

  • 良い場合 債券安 
  • 悪い場合 債券高 

債券市場もシンプルで、金利上昇による債券価格の下落、もしくは金利低下による債券価格の上昇のどちらかになる。 

株式市場 

  • 良い場合 まちまち 
  • 悪い場合 まちまち 

株式市場は少し複雑だ。金利の上昇は金融環境が引締められることを意味するため、これは企業活動にとってはマイナスの要素となる。一方で労働市場の改善は景気が上向きなことを意味するので、株価にとってはプラスになる。また金利上昇によって恩恵を受ける企業があれば、損する企業もあるため、反応はまちまちになる。 

2017年の米雇用統計  

今後の注目点は平均賃金になりそうだ。

2016年12月現在、米労働市場完全雇用を達成、もしくは近づきつつあるといわれている。つまりほとんどの米国人は職に就いている/就くことができる状態にあり、平均賃金は上昇を始めている。非農業部門雇用者数は毎月15万~20万人のペースで増加しており、労働需給はひっ迫しつつある。

労働市場の堅調さを受けて、FRBは2015年12月に9年半ぶりに利上げを実施した。2016年前半は金融市場が大荒れとなったため、その後しばらく利上げは実施されていないが、今月12月には2度目の利上げが行われる可能性が非常に高い。

また来年以降も複数回実施することが予想されている。

労働需給により賃金インフレが加速すれば、FRBは景気の過熱を防ぐためより金利を引き上げていくだろう。